2013/04/29

沈黙の壁 (1974) <未>

El muro del silencio (1974) ★★★★

「エル・トポ」に出てきた裸ん坊の男の子ブロンティス・ホドロフスキー君主演。彼の子役時代を観るのはこれが2作目。大人になってから出演した「サンタ・サングレ」など、実の父親アレハンドロ・ホドロフスキー監督の作品に多く出演しているが、この「El muro del silencio」は別の監督。

ブロンティス・ホドロフスキー君は個人的に好きな子役。謎めいたところが良い。「エル・トポ」では、登場シーンは少なく、まともに声を聞くこともなかったが、この映画ではしっかり観られた。

ジャンルは、サイコスリラー。過保護な母親に育てられたダニエル(Brontis Jodorowsky)は学校にも通っておらず、いつも一人で遊んでいる。映画のタイトルをそのまま訳すと「沈黙の壁」。ダニエルは、近所にある壁の向こう側で、自分だけの世界を作り上げているようだった。薄暗い中を自分で作ったブランコに揺られている姿は不気味だった。

ダニエルの母親レジーナは、病気がちで突然発作に襲われる。彼女とダニエルが住んでいる屋敷は本来彼らのものではなく、レジーナは自分が死んでしまったあとに、ダニエルが居場所に困らないよう必死になっている。しかし大切に思うあまり、ダニエルを半ば拘束気味に。ダニエルは、母親に発作が現れて倒れると、急いで薬を取ってくる。2人の絆は深いように思われた。

ダニエルは、親戚の叔父さんジョージの所に一時的に住まわせてもらうことになる。そこの子供たちと過ごす日々は、今まで過保護に育てられたダニエルにとって初めての体験も多い。ダニエルは食事を手で食べる行儀の悪い子供たちに連れられて湖に行く。脱いだ服を丁寧に畳むダニエルを見て他の子供たちは笑う。おそるおそるゆっくりと水に入ろうとするダニエルを担いで、投げ入れる。夜中、真っ暗な部屋で寝るダニエルは、怖くなって、隣の子のベッドに入るが、蹴りだされる。

そんなことを経て、ダニエルは少し強くなる(Coming of Ageもの?)。家の中の置物のわざと落として壊し、自分がやったと白状する。ベルトで叩かれるが弱音を吐かない。金の時計を盗み、それをお手伝いさんのせいにもする。あるとき屋根に上っていたダニエルをレジーナは目撃する。危ないと、ダニエルを叱ってビンタする。ダニエルは涙を流す。

ラストシーンではレジーナを再び発作が襲う。カバンの中にある薬を持ってくるようダニエルに頼む。しかしダニエルは冷たい目でレジーナを見るばかりで動こうとしない。今まで大切に育ててきた息子に裏切られるレジーナだった。

2013/04/27

チャイルド・プレイ2 (1990)

Child's Play 2 (1990) ★★★★

丸焦げになったはずのチャッキーが復活し、再びアンディに乗り移ろうとする。今回も大人たちはアンディの言うことを全く信じない。前作でチャッキーが動くのを目撃した警察官に証言してもらいたいところだったが、登場してこない。憎たらしいチャッキーはアンディに付きまとい、彼が起こす事件はすべてアンディのせいにさせられる。とんでもなく迷惑だが、チャッキーとアンディの切っても切れない関係は観ていて微笑ましい(?)。

前作同様にとても笑わせられた。チャッキーはアンディをベッドに縛り付け乗り移ろうとするが、少しのところで人がやってきて失敗。そのあとのアンディがチャッキーにパンチを食らわすのが可愛かった。チャッキーが人形になっているときの、雑な扱われ方が面白い。

アンディの味方になったカイルという女の子が頼もしかった。アンディの手を引っ張っていく様子は、弟思いのお姉ちゃんみたいでほのぼのした。

チャッキーはおもちゃ工場で溶かされたり、切断されたりするが、しぶとく2人を追いかける。今回の最期はふくらまされて大爆発。人間になりかかっているチャッキーの血や肉片が飛び散るのでなかなかグロテスク。「チャイルド・プレイ3」も観よう。

2013/04/26

ミオとミラミス 勇者の剣 (1987)

Mio min Mio (1987) ★★★

児童文学作家アストリッド・リンドグレーンの「ミオよ、わたしのミオ」の実写版。ロッタちゃん、やかまし村の子供たち、遥かな国の兄弟、エーミル、孤児ラスムスなど、彼の作品で実写化されているものは多い。

現実世界で苦労を強いられている少年ミオ(Nick Pickard)が、遠くの世界で悪者と戦うという内容。邦題は「ミオとミラミス 勇者の剣」。ミラミスとは馬のことなのだが、本編で全く活躍しないにもかかわらずタイトルになっている。クリスチャン・ベールはミオの相棒ユムユムを演じている。「ミオとユムユム」の方が内容と合っている。

現実世界のミオ、そこではボッセという名だが、彼は「もらわれた子」で、意地悪なおばさんに嫌味なことを言われながら生活していた。夜中ボッセは、おばさんが自分の悪口を言っているのを聞きながら、ベッドの中で目に涙をためているのだった。

ストーリーは単調だが、可愛い子供たちを見る分には満足だった。ミオのたどたどしくて高い声が可愛かった。おとぎの国にいるまま終わってしまうのだが、現実世界のボッセはどうなったのだろう。

2013/04/20

白い掌 (2006) <未>

Fehér tenyér (2006) ★★★★

体操選手ミクロスの少年時代から大人までを描いたもの。少年期は全体の7割ほどで見ごたえもあった。彼の過酷な人生をつらつらと書いていきます。

ミクロスは子供の時から体操をやっていて彼の部屋には何十個ものメダルが飾られている。両親はそんな息子を誇らしく思っている。来客があると、トレーニングを終えたばかりで疲れているにもかかわらず、ミクロスにバク天宙返りを披露させたり、服を脱ぐよう命じて彼の筋肉を見せびらかす。ミクロスがズボンを脱ぐと、太ももにつけられた鞭のあとが現れる。

体操のコーチは子供たちにひどい体罰を与えていた。コーチが「並べ!」と一声かけると、子供たちは全速力で白線に沿って横並びにならなければならない。コーチはフェンシングで使うソードのようなものを振り回す。少し列からずれて白線を踏んづけてしまっていたミクロスは太ももを打たれるのだった。足を広げるストレッチでは、コーチに上に乗っかられ体重をかけられる。子供たちは悲痛の表情を浮かべていた。一番ひどかったのは、わざわざ隣で練習している女の子の集団の前に連れ出して、前かがみにさせ、お尻に何度も鞭を打つという仕打ち。

数年後、ミクロスは少しぐれる。相変わらずコーチから暴力は振るわれていたが、反抗的な態度を取るようになる。陰でたばこも吸っていた。あるときついに吹っ切れてミクロスはトレーニングを飛び出してくる。しかし体操一本でやってきたミクロスは他に行くあてがなく、サーカスに入団し危険なこともやらされる。

大人になったミクロスは指導者の立場になる。しかし時代は大きく変わり生徒を少し叩いただけで親からのクレームがつく。生徒のカイルは、始めこそミクロスを無視していたが、彼が鉄棒の技をやっているのを見て、ミクロスの前でもの凄い転回をやってのける。ミクロスもそれに続く。言葉を交わさずして2人の距離は縮まるのだった。最終的に2人は国際大会に出場する。

その国際大会の場面は、ミクロスの子供時代、サーカスに所属していた時の空中ブランコの場面と同時進行で進む。スリルのある演出にするために、安全ネットがない状態でやらされる空中ブランコだった。その場面と、大人になってついにスポットライトを浴びることになった国際大会での跳馬の場面が交互に映される。結果は、空中ブランコは失敗。地面に落下し担架で運び出される。それと同時に大人のミクロスも、跳馬の着地に失敗するのだった。


2013/04/19

未来を生きる君たちへ (2010)

Hævnen (2010) ★★★★

クリスチャン(William Jøhnk Nielsen)の母親はガンを患い死んでしまう。彼の転校先のクラスメートのエリアス(Markus Rygaard)は「ねずみ顔」と呼ばれて苛められていた。

クリスチャンは心に闇を抱えたような少年だった。ポケットにナイフを忍ばせて学校に行く。エリアスはいじめや両親の不仲など過酷な状況ではあったが前向きでいるようだった。2人は学校でもそれ以外の時でも一緒にいることが多くなり、あぶない方へ向かっていく。

2人はネットで調べた方法で大量の火薬を詰め込んだ爆弾を作る。それで気に入らない大人の車を爆発させる。そこまでするかと思ったが自暴自棄になっていたクリスチャンは思いとどまらなかった。

2つの家庭の父親と息子の関係が描かれている。ひんやりした関係。いくら自分にとって気に入らないことがあっても、暴力をふるうのは良くないと思った。この映画で一番言いたかったことなのでは。殴られて殴り返してしまっては自分まで愚か者になってしまう。感情的にならず冷静でいることが大事だ。エリアスの父親は人格者だった。

陰のあるクリスチャン、黒いポロシャツが似合っていた。飛び降り自殺を図るが寸前のところでエリアスの父親に抱きかかえられる。

チャイルド・プレイ (1988)

Child's Play (1988) ★★★★

こんなに恐ろしいパッケージの映画でも可愛い子は出てくる。アンディー(Alex Vincent)は自分の誕生日にテレビのコマーシャルで見かけた「グッド・ガイ人形」が欲しいと言い母親に買ってもらうのだが、それは勝手に動き出してナイフを振り回す殺人人形だった。

突っ込みどころ満載の内容で笑ってしまう場面が多かった。まずあんなに不細工な人形を欲しいと言いだすアンディーに笑わされた。それから「グッド・ガイ人形」という適当なネーミング。一番笑えたのは、エレベーターの隅に座っているチャッキーを見たおばさんが「醜い人形ね」とぼそっと言う場面。そのあとチャッキーは「うるせえ!(Fuck You!)」と言い返す。

チャッキーの動きにCGなどは使われておらず(どうやって撮っているのかはわからないが)、それが不気味さを増していた。最初から醜い顔をしているが、動き出すようになってからはさらに憎たらしい顔つきになっていく。顔面に根性焼きを食らい頬がただれる。最後には暖炉に突っ込まれて真っ黒焦げになるのが、それでも相手に向かって飛んでいく。しぶとい奴だった。それでいて妙に憎めない奴でもある。

2013/04/15

行け!パラゴン (1970) <未>

Paragon, gola! (1970) ★★★★

ポーランドのサッカー少年たちを描いたもの。話の中心は人々の生活の様子でサッカーをしている場面は少ない。

主役のパラゴン(愛称)はがっしりした体形で運動神経の良い少年。演じたのはMarian Tchórznicki。彼の父親は出ていったきりで、鉄道関係の仕事に携わる母親とパラゴンは2人で細々と生活していた。パラゴンが所属するチームは正式なものではなく、ぼろぼろのボールを使って仲間とサッカーをしていたのだが、別のチームの子供たちにボールのことを馬鹿にされる。その後パラゴンはプロの選手たちが練習しているフィールドへ行き、飛んできたボールを選手に渡す役目をこなしながらこっそりボールを1つ盗むのだった。チームの仲間たちはどこで手に入れてきたのかを問いただすが、パラゴンは「関係ないことさ」とだけ言いサッカーに興じていた。しかしたまたま盗んできたボールの持ち主、有名なサッカー選手のstefanekが通りかかり、盗みを働いたことが仲間たちにばれてしまってパラゴンは仲間はずれにされてしまう。

喫茶店で喧嘩をして警察沙汰になったり、ユニフォームをそろえるための積立金を失ってしまったり、その他にもチームの合併の危機、パラゴンの母親の入院、悪徳な契約など、いろんなトラブルをなんとか乗り越えていきながら、パラゴンの所属チーム「Siren」はトーナメントを勝ち抜き見事優勝する。良い意味でも悪い意味でも元気な子供たちを観ることが出来た。パラゴンは怪我のせいで決勝戦には出場していなかったが病室でラジオを聞いて雄叫びをあげていた。

2013/04/13

海賊の町 (1984) <未>

La ville des pirates (1984) ★★

今のうちに書き記しておかないと忘れてしまいそうなので軽く感想を。出演しているMelvil Poupaud君が可愛い。くるっとした巻き髪など彫刻作品のよう。

ストーリー性を排し感覚的に仕上げた作品は、自分の感性と合わない時は本当に疲れる。英語字幕を必死に目で追ったがかなり抽象的でついて行けず置いてけぼり。斬新な映像のつなぎ合わせは目を見張るものがあったので何とか見続けることが出来た。気味が悪くどこか耽美的な雰囲気は「蒸発旅日記」に似ていると思った。ただ映像のセンスは「蒸発旅日記」と比べるとこちらのほうが格段に上だと思う(あの映画の場合はとにかくセットが安っぽくてだめだった)。

サン・セバスチャン(スペイン)の海岸沿いが舞台。美しい風景が見られる。イシドールは得体のしれない美しい男の子を目撃し惹かれていく。その子は周りの大人をナイフで突き刺し殺していく。イシドールも一緒になって血の海と化した床の上に紙で作った船を浮かべて火をつける。かなりサイコな内容。Melvil Poupaud君の出番は少ない。

2013/04/12

トーマスと隼の王様 (2000) <未>

Král sokolu (2000) ★★★★★

主演はブラノ・ホリチェク(Brano Holícek)君。可愛いとかっこいいを兼ね備えた王子様のような美少年。この映画では、動物を愛し、思い通りに操ることのできるトーマス少年を演じている。

小高い丘に位置する農場で育ったトーマスは、山頂にそびえる城に住むフェルミナ姫と、ひょんなことから知り合うようになる。城内での馬の暴走によってトーマスはその時泥だらけだったが、フェルミナ姫にダンスエスコートされ、すっかり彼女に惚れてしまうのだった。しかし、フェルミナ姫にはフィアンセのオストリクがいた。そのことを知ったトーマスは、草原の中にうずくまり、涙を流す。それでもトーマスはひがむことなくフェルミナとオストリクを結びつける愛のキューピット役をこなす。

トーマスは動物を操る能力を使って人々を困惑させる。獲物を捕らえるように調教された犬を役立たずにしてしまったり、相手の服の中をネズミに這いまわさせたり。どの場面もコミカルに描いていて可愛らしかった。

トーマスの着ている服のサイズが体格より大きめで、ちらちらと肩や胸元がはだけていた。首筋から鎖骨にかけてのラインがとても綺麗で見とれてしまうほどだった。城に出向いた時に受け取った高貴な服を着ることによって、ブラノ君の姿はイメージ通りの「王子様」となった。泥だらけになるシーンでは、いくら汚れていても、美しい上品な顔立ちは損なわれないことを実感した。映画の内容よりブラノ君のブロンドの髪、緑色の目や表情ばかりに気を取られた。寝るときには上半身裸になるのだが、お腹まわりなどは少しぽっちゃり気味だった。野宿する際も上半身裸になっていた。起き上がってそのまま水浴びする場面では本当に寒そうにしている様子が伝わってきた。


2013/04/07

おもいでの夏 (1971)

Summer of '42 (1971) ★★★★

ニューイングランドの沖合いに浮かぶ美しい島を舞台に思春期の男子3人組をノスタルジックに描く。笑える場面も多いが、ぎりぎりのところでコメディではない作品だと思う。

むさくるしい男子3人組による馬鹿な行動は、見ていてこっちまで恥ずかしくなった。自分も経験したようなことでもあって、映画の最中に恥ずかしいエピソードを思い出したりした。ちょっとした大人だったら口にしそうにないことばかりを主役の男子たちが言っていて笑ってしまう。「家族と暮らしているの?」と聞かれると、「はい。でも僕は僕だけでやってます」などは笑いのツボにはまった。

女の子を映画に誘って隣同士座るのだが、男たちはおっぱいを触ることしか頭にない。あまりにしつこいので、下腹部にパンチをもらっていた。それでもあきらめず、映画が終わって女の子と別れると、「11分もおっぱいに触っていたぜ」と、お互いに功績(?)を自慢しあう。11分という具体的な数字をあげるところなど笑える。結局、「おっぱいじゃなくて、腕だったぞ」と相棒から指摘され、ふてくされるのだった。

薬局にコンドームを買いに行く場面など、あまりに馬鹿すぎてヤラセ感が出てしまっていた(それでも面白かった)。自分が中学の時に部活の先輩から「コンドームはお守りになるから財布の中に入れておけ」と教えられたが、この映画でもコンドームのことを「ラッキーチャーム」と表現していて、40年前のアメリカでも同じだったのだなと思っておかしくなった。

突っ込みどころ満載で、ずっと笑っていられるような内容だったが、ラストはしんみりとする。近所のお姉さんとベッドを共にするときなど、今までの馬鹿さがいきなり吹っ飛んで、真面目で哀愁漂う表情を浮かべていた。話をまとめてきたのかもしれないが、その場面では退屈した。

2013/04/06

瞳は静かに (2009)

Andrés no quiere dormir la siesta (2009) ★★★★★

1970年代のアルゼンチンを舞台にしたサスペンス。主役を演じたコンラッド・バレンスエラ(Conrado Valenzuela)君を見るための映画と言って良いと思う。彼でなければおそらく退屈していた。映画予告に「アンドレスの深い瞳はアナ・トレントの子供時代を思わせる。」という文句がつけられていたが本当にその通り。「思わせる」というより、単純にコンラッド君の見た目が子役時代のアナ・トレントと似ている。「ミツバチのささやき」を意識したようなショットもあった。

とにかく、場面によって変化していくアンドレスの表情は見逃せない。髪型や服装などにもこだわりを感じた。ちらっと見せる大人っぽい表情の割には年齢が低く、彼の全身が収まるショットでは、顔つきと体型のギャップに違和感を覚えることもあった。幼児体型というのか、丸っこくて愛くるしい。美少年を表現する際の「女の子と見間違うほどの…」という言い回しは、アンドレスのことを言うのにぴったりの表現である。

アンドレスの学校の友だち、脇役の男の子たちも、特に可愛い子を選んでいるのだと思う。そんな子供たちがはしゃぐ空地の中でも、アンドレスは特に際立っていた。短い半ズボン、ビー玉遊び、運動靴を素足で履くところなど、時代を感じる。

物事がはっきり説明されず、注意深くストーリーを追う必要があったりと、サスペンスらしい作品だった。アンドレスの母親が事故で亡くなってからというもの、周りの大人の言うことなすことが不気味だった。理解できない表情の変化であったり、隣人との目配せ、探り探りしたぎこちない会話など。アンドレス自身も、母親が死んだという実感が湧いていなかったのか、嘆いている様子はほとんどなかった。

先ほど見終わったばかりだが、正直理解できないことが多い(特に答えはないのかもしれないが)。最初にも述べたが、コンラッド君が魅力を振りまいてくれていなければ、ちゃんとしたレビューを書ける状態ではない。ただ作品自体の完成度としてはいまいちな印象ではある。

2013/04/05

少年と自転車 (2011)

Le gamin au vélo (2011) ★★★★★

「少年と自転車」というタイトルからは、話の内容が全く見えてこない。想像していたものとはだいぶ異なっていた。ここ最近で鑑賞したフランス映画、「君と歩く世界」「遥かな町」と、テンポであったり、雰囲気などが似ている。基本的にどれも暗い。この感じがフランス映画の特徴なのかな。

じっくりと、全編にわたってシリル(Thomas Doret)のことを描いていた。彼は無責任な親のせいでホームでの生活を余儀なくされている不幸な少年だった。散髪屋のサマンサだけが彼を受け入れ、最後まで裏切らない。好感のもてる女性だった。

先のことが予測しづらい内容だった。開始30分ほどでシリルと父親は再会を果たすのだが、「会いに来るな、連絡もしてくるな」と父親はシリルを拒絶する。その時点で、これ以上父子の関係が改善されることはないのだと思った。見ている側に残されているものというか、シリルにとっての希望としては、面倒を見てくれるサマンサの存在と自転車だけ。そんな大事な自転車も、何度か盗まれる(鍵をかけとけばいいのにと思った)。自転車泥棒を全力で追いかけていくシリルの姿を見ていて、「駆ける少年」のアミルを思い出した。

シリルはギャングのリーダー格の男に見込まれ、良くされるが、男の目的は何なのだろうと思った。ゲイなのかなとも思った(こんな風に考えてしまうのです)。ギャングたちに仲よくしてもらえれば、シリルも少しは孤独を感じずに済むし、それでもいいかなと思ったが、やはり利用されていただけであった。犯罪に加担させられ、警察に追われる。

最後のシーンまでどうなるか分からなくて、引き付けられた。木から落ちたシリルが、起き上がるかそうでないかで、まあハッピーエンド、もしくは超バッドエンドのどちらにでも運ぶことが出来たと思う。

2013/04/04

ティーンエイジ・パパラッチ (2010)

Teenage Paparazzo (2010) ★★★★

13歳のパパラッチ、オースティンを追ったドキュメンタリー映画。深夜の3時でもパパラッチ仲間からセレブたちの出現情報を聞きつければ、大きなカメラを抱えて全速力。何かに夢中になっている少年は見ていて楽しい。「ハリウッドをスケボーで滑る彼の姿はスピルバーグ映画そのもの」という言葉があったが、オースティンを見ていて受けるイメージはまさにそんな感じ。

オースティンを追いながら、現代の若者の抱える問題に迫った映画でもあった。納得させられることが多く、危機感を覚えた。今のうちに何度か見直して良く考えてみたい。オースティンは自分がテーマのこの映画を50回見たらしい。

中学生を対象にしたアンケートの話も興味深かった。「将来何になりたいか」という問いに、大企業の代表取締役、大学の総長など、かなり良い選択肢がある中で、一番多かったのは42%もの生徒が選んだ「セレブの助手」だったらしい。そういえば自分が幼稚園児ぐらいのころ、将来何になりたいかとよく聞かれた。適当にパン屋さんと答えていたが、想像もつかず、本当になりたいとは思っていなかった。そんな感じかもしれない。今もそうだが。

最終的に、話はオースティンにパパラッチをやめさせようという流れになる。たしかにイメージの悪い仕事ではあるが、需要はあるし、本人さえよければそのまま精一杯続けていけば良いのではないかと思った。

オースティンはテレビで取り上げられ、女の子の間でも人気者になるのだが「可愛いわね」と言われると、照れた感じで「テンキュー」と答えるところが可愛かった。

2013/04/03

遥かな町へ (2010)

Quartier lointain (2010) ★★★★

いつも取り上げている少年たちより年齢は高めだが、超絶美少年レオ・ルグラン(Léo Legrand)君の最新作ということで。

日本の漫画家、谷口ジローの「遥かな町へ」が原作。フランスで、レオ・ルグラン君をキャスティングし、おしゃれに実写化されたものである。

主役は元々おじいちゃんで、タイムスリップ後の若い彼を演じたのが、レオ・ルグランである。未来から来た彼は時々おかしなことを言い、周りをキョトンとさせる。両親に再び会えたことに感動し、やたらといたわる様に接するのだが、突然の息子のそんな態度に、訝しげな表情を浮かべる父と母であった。

かつて恋心を寄せた幼馴染の女の子といいムードになり、キスを迫られるが、「君はまだ15歳だ。」と言い、受け入れない。体は若返っても、精神的には追いついていないという場面もあった。

前に、レオ君出演の「ジャックソード…」を見たときは、話の内容は二の次だった。レオ君見れればそれでよかった。しかし「遥かな町へ」は、脚本も良かったのか、美しいフランスの建物、通りの色彩、配役、など上手く融合し、見事な雰囲気を作り出していたと思う。成長したレオ君は、顔の角度やシーンによって、幼く見えたり、大人っぽく見えたりした。声は高かったので、声変わり前の撮影だったのだと思う。小さい頃と変わらないのは、なんともいえないあの眼差し。そういえば、水着の下でのもっこり反応は、実際のレオ君の・・・?



2013/04/01

妖精たちの森 (1971)

The Nightcomers (1971) ★★★★

舞台は20世紀初頭のイギリス、田園風景の中にそびえる大邸宅。のどかな草木、空の色、クラシックな建物、服装など、眺めているだけで満足する映像の美しさだった。邦題の意味する妖精たちとは、幼いマイルズ(Christopher Ellis)とフローラ姉弟のこと。どちらも美男美女ときていて、ストーリー以上に視覚から得るものが大きかった。

特にマイルズ。風貌もそうだが、話し方や表情など、とても上品。心もピュアで、それゆえに、見たものをそのまま吸収していく。ただ、大人の悪い部分だけを吸収し、自分のものにしていくのだった。

天使のような2人だが、涼しい顔でひどいことをする見た目とのギャップが魅力的だった。セックスというものを目撃したマイルズは、姉を相手に見よう見まねで実践する。姉をロープで縛り、鞭を打ち、「約束したろ、愛のエクスタシーを味わうって」というような、SMビデオさながらのセリフを飛ばす。二人の声を聞きつけた使用人が「何をしているの!?」と問い詰めると、マイルズは「じゃあ正直に言うからね。セックスしてたんだ」と、さらっと返答する。

突拍子のない展開を迎えて、多少興ざめはしたものの、マイルズを観ることのできるこの映画の価値は高い。