2013/06/29

トムとトーマス (2002)

Tom & Thomas (2002) ★★★★★

トムとトーマスの2人をアーロン・ジョンソン君が演じている。内容がどうのこうのの前に、この子がものすごく可愛い。今は結婚していて、アーロン・テイラー・ジョンソンと名前が変わっている。こんなに可愛い子がもう結婚しているのか、と10年前のこの映画を観ながらしみじみした。彼は、子役時代でお終いの俳優ではなく、最近の作品にも出演していて、「キック・アス」では主役級だった。さえないオタク青年を演じていて、ポルノを見ながらオナニーしていた。こんなに可愛い子が・・・と、ここでも寂しさを覚えた。

アーロン君の魅力たっぷりだった。表情やセリフの言い回しなど流石で、今でも活躍していることがうなずけた。映画初出演だということでますます才能を感じた。ただ、可愛い雰囲気の割には、人身売買がテーマとなっていて、意外とえぐい。麻酔を打たれて、動物たちと一緒に飛行機に乗せられる。トムの背中には、孤児院で打たれた鞭の痕が、痛々しく残っている。

トムとトーマスが出会う場面が良かった。一瞬で意気投合し、街をころころと駆け回っていく姿にはほのぼのした。それから誕生日パーティー。2人いることがばれてはいけないのでトーマスは宇宙服をかぶって出て行く。ラストもそうだが、ここもスリリングだった。

数年前に初めてこの映画を観たときは、子供向けなのかなと、あまり期待せずに見たが、思った以上に面白くて感動したことを覚えている。今回も間違いなく面白かった。お勧めできる一本。

2013/06/25

バダック 砂漠の少年 (1992)

Baduk (1992) ★★★

父親を事故で失い、バダック(運び屋)として、売り飛ばされる少年ジャファル(Mehrolah Mazarzehi)。唯一の肉親である妹とも引き離されてしまい、妹との再会を望み各地を行き来する。

「オリバー・ツイスト」のような話で、孤児オリバーの場合は街をうろうろしているところを捕らえられたが、この映画のジャファルと妹は、砂漠をさまよっているところを、金目当ての大人に捕まって、売り飛ばされてしまう。ジャファルは運び屋に、妹は、娼館のようなところに。

ジャファルを運び屋として買い取った集団の中には、「オリバー・ツイスト」で言うところのジャックのような、ずっとその道を生き抜いているユセフという名の少年がいて、彼からいろんな情報を聞き出す。ユセフは親切だったが、雇い主の大人2人に殺されてしまう。裸足の足を踏みつけられ、ロープで首を絞められる場面は衝撃的だった。

ジャファルは、妹に会いたい一心で、運び屋の組織を命がけで抜けてくる。しかし、行く先々で大人たちに騙されてばかり。今回も罠なんじゃないかと、観ていてひやひやさせられた。例えば、鉄線を掻い潜って国境を超えるのだが、先に超えてしまった者は、残された者のことなどどうでもよく、振り返りもしないで走り去ってしまう。

この映画みたいに、実際に子供たちが売買されるようなことが、今のイランの子供たちにも起きているなら大変なことだ。印象的だったのは、トラックの荷台に載せられた数十人の子供たちが、荷台から飛び降りる場面。みんな道路に体を打ち付けていた。とても危険な撮影だったのだろうと思う。そのあと、重い荷物を背負った子供たちは、全速力で荒野を駆け抜けていく。中には倒れてしまう子もいるような場面を、スローモーションで淡々と映し出すあのシーンはじんと来た。

2013/06/20

青きドナウ (1962)

Almost Angels (1962) ★★★★

ずっと観たいと思っていた映画。ディズニーだしウィーン少年合唱団だし、観たい人は少なくないと思うが、DVDになっていないしVHSですら見つけることが困難なのは不思議。

子供たちがワイワイとしていて楽しそうではあったが、その裏には声変わりをしてしまえばお終いという現実があって、切なかった。とてもきれいな声なのだが、心の底から楽しめないというか、例えば旅行に行って、その時は楽しいが、あと数日で帰らなければならないということを考えてしまった時のよう。そんな儚いところもまた良いのだろうけれど。

主役のトニー(Vincent Winter)はオーディションをパスし、あこがれのウィーン少年合唱団に入団する。世界各国を飛び回り、歌うことが出来る。ずっと一緒に生活している仲間といろんな国へ行けるのはすごく楽しいだろうなと思った。歌のレッスンの途中に、次の公演はどこですか?と先生に聞いたりしていて、海外に行けることが歌うこと以上に楽しみな様子だった。

ただ、年長のメンバーの中には、間もなく声変わりを迎えそうな子もいる。高い声が出なくなってしまったらツアーについて行く必要もなくなる。旅立つ直前に声が変化してしまったピーター(Sean Scully)を、みんなでかばう。口パクで歌わせ、後ろで別の子が歌うという作戦を立てるが、さすがに上手く行かない。そこまでして仲間を想う団結力にじんときた。

終わりが見えている少年合唱団に入団することはある意味残酷だなと思った。しかし劇中でも話題になっていたが、フランツ・シューベルトはもともとウィーン少年合唱団の一員だったらしい。声変わりを迎えて一度は挫折を味わうが、その後、彼のように偉大な音楽家になる生徒は多い。ふてくされないことが大事。


2013/06/10

リトル・ブッダ (1993)

Little Buddha (1993) ★★

allcinemaの解説の書き出しに、「世評は必ずしも芳しくなかったが、」とある。たしかに退屈した。宗教が絡んだ作品は多いが、仏教を取り上げたこの作品は、何となく日本人としてなじみやすい考え方だと思った。森にこもってずっと静かにしているなんて、西洋の人たちにとっては考えられないことかもしれない。

アメリカに住むジェシー(Alex Wiesendanger)の所にいきなりお坊さんたちがやってきて、だれだれの生まれ変わりだ、と言われる。意外にもジェシーの両親はちゃんと話を聞き、父親はジェシーを連れてブータンに飛ぶ。

現地に着くと、ジェシーは他の生まれ変わりの候補者2人と一緒になる。さまざまな試練(?)を乗り越えて、結局3人とも生まれ変わりだということに。

シッダールタを演じていた俳優がかっこいいなと思ったら、キアヌ・リーヴスだった。アジアっぽい顔をしていると思ったのはメイクのせいだった。西洋の人たちから見た仏教の話という感じだった。


2013/06/08

山河遥かなり (1948)

The Search (1948) ★★★★

戦争によって母親と離ればなれになってしまったカレル少年(Ivan Jandl)と、彼を保護したアメリカ兵ラルフの交流を描く。

カレルの母親は当てもなく街を歩きまわり、息子を捜す。一度は同姓同名の子を施設で見つけるが、別の子だった。「チェンジリング」の母親とよその子の再会の場面を思い出した。あの映画では失望感が強調されていたような気がしたが、こっちの母親は、別人が目の前に現れてきても、そこまで取り乱すことはなかった。

カレルははじめ、口を利くことが出来ず、大人に怯える姿など、まるで動物のようだった(「野生の少年」の子を思い出した)。パンで引き付けられて、捕まえられると、腕の中で暴れまくる。収容所の体験で大人は悪者ばかりだと思っていた。アメリカ兵のラルフは息子同然のようにいろんなことをカレルに教える。カレルもそれにこたえ2人はとても仲良くなる。ラルフがとてもかっこよかった。

最後はもっと感動的に演出できたのではないかと思う。しつこ過ぎるのもあれだが、ラストを迎えるまでが見事だったので、多少あっけない感じがした。最高のハッピーエンドだが、ラルフとカレルが別れてしまうのは残念だと思っていたので、その場面まで映さず、最高潮に達したところでのThe Endの画面は良かったと思う。


2013/06/02

父、帰る (2003)

Vozvrashchenie (2003) ★★★★★

この映画はDVDで何度も観ていて昨晩また観た。ふとした時に味わいたくなる雰囲気。広々とした自然、さびしい街、母親の疲れ切った表情、など。なんといっても2人の兄弟の気持ちがびんびんと伝わってくる。この種の子供の心情が伝わってくる作品は他に観たことがない。自分が子供の頃の、なんとなく思い出したくない記憶をつつかれる感じ。今回は映画を観ながらポイントになるところをメモしていった。まずは「お父さんが帰ってきているわよ」と聞かされた時の2人の反応。どうなるのだろうと、ぞわぞわする。そして予想のつかない、不安ばかりの旅が始まる。

兄 アンドレイ(Vladimir Garin)
兄と弟の性格の違いもしっかり現れる。アンドレイはなんとなく情けない。父親と初めての食事の場面、父親が2人にお祝いを兼ねてワインを飲むよう言う。父親に認められたいアンドレイはほとんど飲んだことのない赤ワインを嬉しそうに、むしろ媚びるように飲む。「もう一杯」とまで言うが、「もういい」と父親に制される。アンドレイの思惑は上手く行かなかった。ここで、自分が父親のために変な気を使っているということが相手に察せられてしまう。また、就寝時の弟イワンとの会話の「すごい筋肉だったな」や、父親から財布を預けられた時の「すげえ入ってる」など、父親を凄い人物だと思いたいことがうかがえた。

弟 イワン(Ivan Dobronravov)
兄とは違い、弟のイワン(Ivan Dobronravov)は、父親を受け入れられないというか、なんだこいつ、とまるで得体のしれないものと接しているかのようだった。「パパ」と呼ばない。父親がいないところでは「あいつ」呼ばわり。斧で切り刻まれるかもしれないと思っている。父親に忠実であろうとするアンドレイの傍ら、自分の意見を曲げない。お腹がすいていても、父親に言われるがまま入ったレストランでの食事はとらない。情けない兄貴を言いくるめてしまう。さっぱりしていて好感の持てる少年だった。

父親。
父親については一見すると威厳があって立派な父親のように思える。旅の途中には息子たちに教えられることは教えていく。しかし話が進むにつれて、息子たちに対して臆病になっているような場面がちらほら現れる。実際のところは、この映画では不完全な父親を表現しているのだと思う。弟のイワンが、父親に向かって本音をぶつける場面がある。探り探りな父と子のやりとりの中、この時のイワンの発言がそんな関係を最初に吹っ切ったのだった。「どうして今更帰ってきたんだ。あんたなしで上手く行ってたんだ。・・・」。これに対する父親の第一声は「お母さんが、提案して」だった。そのあとに「俺もそうしたいと思って」と付け加える。父親からしてみても、息子たちとの距離感をつかめていないことが浮き彫りになった場面。また、アンドレイがなにかジョークを言い父親は笑うという緊張がほぐれる場面がある。お互いの距離が縮まりそうになったそのとたん、父親の方から会話を遮ってしまう。最後まで乗らない、乗れない父親だった。

いろいろ書いてみたが、感じたことを文章にするのは難しい。

この映画の緊張感の継続は凄いと思う。最初から最後まで目が離せない。劇中に数回、スコールみたいな雨を降らして3人をびしょ濡れにするのが効果的。一生懸命運んだ父親を失ってからの、写真のスライドショーはむなしすぎた。