Trash (2014) ★★★★
ゴミ山で暮らす3人の少年たちが政治的に隠ぺいしなければならない情報の入った財布を拾ってしまったことで、警察から命を狙われることになる。ブラジルの警察は、まずいことになればゴミ山の貧乏人なんて始末してしまえばいいと考えている。
「僕たちが何をした」とラファエル、ガルド、ラットの3人の少年たちは訴えかけている。何をしたわけでもないのに虐げられてゴミ山で大変な生活を送っている。抵抗すると痛い目を見る、おとなしくしている方が利口だ、と考える大人もいるが、3人の少年たちは「正しいことをする」という単純明快な理由で、おじけづくことなく国家権力に抵抗するのだった。
実際にスラムで育った少年をキャスティングしたとのことで、素人の子供を主役にこれほど予算のかかってそうな大作映画をよく撮れるなと思った。(今の日本映画だと無理?)内容も素晴らしく、「リトルダンサー」などを楽しめた方は十分見る価値があると思う。若干映画的なご都合主義、ストーリー的にみたらうまくいきすぎだろと思える場面もあるが、それらがマイナスになっているわけではなく、映画の完成度を高めて見やすくもなっていると思う。あまりに現実的になりすぎず、ブラジルの黒い部分は多少グロテスクな表現を使ってでもしっかりと伝え、少年たちの正直な行動を観ることによって希望を与えてもらえる映画だと思う。
決して豊かではない社会の中でもそれらと上手く付き合って乗り越えていく少年たちに逞しさを感じた。ゴミ山で過ごす人たち、少年たちがいつか住みたいと思っている綺麗なビーチ、お手伝いさんを雇って立派な家に住んでいる政治家、ワイロを渡さないと通してくれない男、警察に追われている3人を助けてくれる親切なお姉さん。いろんな良いもの悪いものが混在した社会だった。
クライマックスに墓地で現れる女の子は幽霊なのかと思って観ていたが実存する女の子だった。