2013/12/11

ウォールフラワー (2012)

The Perks of Being a Wallflower (2012) ★★★

久しぶりに青春時代のわくわくした感じを思い出させてくれた映画だった。

中学時代までのチャーリー(Logan Lerman)はさえない奴だった。勉強はできたものの友達はおらず、「壁の花」のような存在だった。しかしすんなりと高校デビューをやってのけ、パトリックとその妹のサムといった、楽しい仲間たちと過ごすようになる。

率直な感想としては、理想的過ぎる青春時代だと思った。チャーリーは成績もよく、好きな女の子もいて、友達の家でドラッグパーティーである。観ていて面白いのだが、共感できる部分はほとんどなかったように思う。チャーリーが女の子に、おすすめの曲を入れたカセットをプレゼントして喜んでもらっていたが、同じようにCDに曲を入れてプレゼントしたら逆効果だったことならある。

模試の結果一つで、すごく落ち込んだり、飛び跳ねて喜んでいたりしたが、自分も高校時代はあんな感じだった。ただ、大学を卒業しようとしている今になって考えてみると、高校の時の成績とか、もっというと、どこの大学に進学したとかいうことは、そんなに関係のないことだと素直に思える。

映画で観る外国の学生生活はほんとに楽しそうだ。誰かの家に大勢呼んで、音楽かけて、踊り明かすなんてことは、日本にはない習慣。外国ではドラッグは割と簡単に手に入るものなのか。すごく楽しそうにやっている。いけないことだけれど。

この映画に期待したことは、青春時代の楽しいことより、その時期特有の辛さとかの方だったのだが、はっきり言ってチャーリーが抱えているのはぜいたくな悩みばかり。この程度で苦しんでいるようでは、イケてる友達や可愛い彼女をつくるなんてことは初めからあきらめている人たちの立場がない。

2013/12/10

孤独な天使たち (2012)

Io e te (2012) ★★★★★

原題を直訳すると「あなたと私」。登場人物はロレンツォ(Jacopo Olmo Antinori)とオリビアの2人だけであとはほとんど出てこない。2人とも世間から疎外されているような少年少女。中学生のロレンツォはクラスのみんなとうまくやっていけていない。オリビアは、薬物依存症で苦しんでいる。そんな2人が地下室にこもり始めてから、出ていくまでを描いている。

何が起きるというわけではないが、観ているだけでじんわりする映画だった。若い人たちの方が共感できる内容だと思う。ロレンツォは、学校でもipodで音楽ばかり聞いているが、彼の気持ちがわかる気がする。周りから聞こえてくるおしゃべりとか、もろもろの雑音をシャットアウトしたい。聞いている曲も自分と好みが合っていた。ザ・キュアとか、一昔前のロック。今すごい勢いのあるバンド、ミューズの数ある曲の中でも、代表作からは少しずれた、”Sing for Absolution”を好むあたりとか。

ロレンツォは正直言って不細工。「孤独な天使たち」なんていう邦題がつけられているし、そのタイトル通り繊細な内容だし、美少年を起用すれば、「僕のエリ」みたいな、受けのいい作品になりそうだと思った。ただ、ロレンツォ役にあの俳優を選んだところに監督のセンスの良さを感じた。実際あんなふうに引きこもる少年に綺麗な顔をした子はいないだろう。ロレンツォは、ニキビだらけで、うっすらひげもはえていて、アリなんかを飼っている。イケメンなはずがない。ただそうは言っても、ロレンツォさえもう少し美少年だったら最高なのになと思いながら観ていた。

一緒に地下室で過ごす、オリビアという女の子。こちらは、ロレンツォと違って、はきはきしていて自己主張が激しいタイプ。薬に手を出してしまった不良少女。ロレンツォとオリビアは、一緒なクラスにいても交わることのないタイプ同士である。そんな全くタイプの違う少年少女が、しばらく一緒に過ごすというのだから、2人の間に恋愛感情的なものが芽生えていけば、ストーリーとしては面白くなりそうである。しかし、ロレンツォとオリビアは腹違いではあるが姉弟であるということでもって、安易にそんなことにはしない。あくまで現実的。こういったところもさすがだと思った。

ロレンツォがたまに地下を出て街に行かなければならない場面がある。その時に人目に付かないように、フードを深めにかぶってうつむき加減で歩いていくのだが、その様子からはものすごい孤独感が漂っていた。ただ良く考えると、この映画の中でロレンツォはスキー教室をさぼったことが親にばれないように終始コソコソしているだけのことである。どうしてあれほど追い込まれるのか。そんな感じをフィルムに収めているというのがすごいと思う。


2013/12/01

ニュー・シネマ・パラダイス (1988)

Nuovo Cinema Paradiso (1988) ★★★★

DVDでは観たことあったが、今回映画館で鑑賞。初見の時は期待して観たはいいものの、どこが良いのか正直わからなかった。尺も長い。ただ今回見直してみると、目頭が熱くなるほど良かった。

自分にとって苦手と言うか、よく分からないのがラブストーリー。この映画は大きく分けて、トトの少年時代(Antonella Attili)、青年期、大人になってから、と3つに分かれる。少年時代が終わるまではぐいぐい引き込まれるのだが、青年期になると、どこの誰だかわからないような女の人とのラブストーリーになってくるのでテンションが下がる。手でくるくるとフィルムを回して映画を上映しないといけないのに、そんなのほったらかしで2人はキスをしている。入場料を払って映画を見に来たどれだけの人に迷惑がかかったことか。

トトとその女の人は、離ればなれになって連絡が取れなくなるのだが、会いたいならちゃんと連絡先を交換しておけよと、まずは思った。ただそのあとに、昔は今みたいに連絡を取り合える時代ではなかったのかと思い直したら、なんだかこの映画の出来事すべてに感動してきた。後から気づいても取り戻せない過去!今ではしつこいぐらいに電話やメールやネットで繋がっているので、別の意味で人との繋がりが薄くなっているような気がする。

今回の劇場版は、以前DVDで観たものと比べて、所々カットされていたと思う。特にラストが思い切りカットされていたのだが、それが良かった。たしか完全版だと、一度は会えなくなったトトと女の人が、何十年後かに、車の中で会っているシーンがあった。それがあるのとないのとでは全然違う。会えないからこそ良い。トトが将来立派な仕事に就いて偉くなってしまうのも寂しさを誘い、少年だったころのトトが一生懸命集めていたフィルムの切れ端を、大人になってから1人だけで観ているラストは切なさが最高潮だった。「ここは俺の広場だ!」と言ってばかりいたあの人は、周りとは対照的にずっと変わらない。