原題を直訳すると「あなたと私」。登場人物はロレンツォ(Jacopo Olmo Antinori)とオリビアの2人だけであとはほとんど出てこない。2人とも世間から疎外されているような少年少女。中学生のロレンツォはクラスのみんなとうまくやっていけていない。オリビアは、薬物依存症で苦しんでいる。そんな2人が地下室にこもり始めてから、出ていくまでを描いている。
何が起きるというわけではないが、観ているだけでじんわりする映画だった。若い人たちの方が共感できる内容だと思う。ロレンツォは、学校でもipodで音楽ばかり聞いているが、彼の気持ちがわかる気がする。周りから聞こえてくるおしゃべりとか、もろもろの雑音をシャットアウトしたい。聞いている曲も自分と好みが合っていた。ザ・キュアとか、一昔前のロック。今すごい勢いのあるバンド、ミューズの数ある曲の中でも、代表作からは少しずれた、”Sing for Absolution”を好むあたりとか。
ロレンツォは正直言って不細工。「孤独な天使たち」なんていう邦題がつけられているし、そのタイトル通り繊細な内容だし、美少年を起用すれば、「僕のエリ」みたいな、受けのいい作品になりそうだと思った。ただ、ロレンツォ役にあの俳優を選んだところに監督のセンスの良さを感じた。実際あんなふうに引きこもる少年に綺麗な顔をした子はいないだろう。ロレンツォは、ニキビだらけで、うっすらひげもはえていて、アリなんかを飼っている。イケメンなはずがない。ただそうは言っても、ロレンツォさえもう少し美少年だったら最高なのになと思いながら観ていた。
一緒に地下室で過ごす、オリビアという女の子。こちらは、ロレンツォと違って、はきはきしていて自己主張が激しいタイプ。薬に手を出してしまった不良少女。ロレンツォとオリビアは、一緒なクラスにいても交わることのないタイプ同士である。そんな全くタイプの違う少年少女が、しばらく一緒に過ごすというのだから、2人の間に恋愛感情的なものが芽生えていけば、ストーリーとしては面白くなりそうである。しかし、ロレンツォとオリビアは腹違いではあるが姉弟であるということでもって、安易にそんなことにはしない。あくまで現実的。こういったところもさすがだと思った。
ロレンツォがたまに地下を出て街に行かなければならない場面がある。その時に人目に付かないように、フードを深めにかぶってうつむき加減で歩いていくのだが、その様子からはものすごい孤独感が漂っていた。ただ良く考えると、この映画の中でロレンツォはスキー教室をさぼったことが親にばれないように終始コソコソしているだけのことである。どうしてあれほど追い込まれるのか。そんな感じをフィルムに収めているというのがすごいと思う。
2人がずっとこもる地下室。
おばあちゃんには優しいところが泣けてくる。
「大人は判ってくれない」的なラスト。
光りが当たって綺麗な背中(笑)30秒ぐらいこの画のまま。
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