チラシなどでは現代版「スタンド・バイ・ミー」と言われているようだった。2人の少年、エリスとネック、そして指名手配犯のマッドとのひと夏の出来事。「未来を生きる君たちへ」という映画に似ている。淡々と進んでいくが、注意深く見ていないと登場人物の気持ちの変化を見逃してしまうような映画。
エリスとネックの二人は、少し離れた小島で、身を隠しているマッドという男と出会う。人を殺して逃亡しているのだった。いろいろ話をしているうちに、マッドはエリスに向かって「昔の俺を見ているみたいだ」という。
マッドとエリスだけが、まっすぐに愛と向き合っていた。マッドの殺人の動機は、大好きなジュニパーを助けるためだった。エリスも、学校の気になる女の子が男に言い寄られていたら、その男に向かって口よりもまず手が出る。そんな二人はお互いに共通するものを感じて、指名手配されているにもかかわらず、協力し合ったのだと思う。
ただ、マッドとエリス以外の男たちは、愛に対して少し淡泊な見方をしている。自分の気持ちに嘘をつかず突き進んでいくエリスを見て、はっきりとは言わないが、遠回しにエリスを諭していた。そんな言葉には耳を傾けないエリスだったが、実際に女を愛した男たちは不幸になっているようだった。エリスの両親も離婚寸前。そんな頼れるものがないときに支えになったのが、愛のために手まで汚したマッドだった。エリスは人を本気で愛したいと願う。メイパールと付き合うことになり、お互いに楽しそうにしているのだが、結局メイパールにとって、エリスはお遊び相手だった。別の男といるメイパールにひどいことを言われた時は、さすがに強気なエリスでも相当ショックを受ける。胸が痛くなるシーンだった。
マッドに関してもそうで、ジュニパーに会いたいという一心で、空腹を我慢しながら身を隠し、脱出のためのボートの修理やらをする。ジュニパーはマッドが献身的に尽くしてきた女である。エリスとネックの少年2人も、マッドに応えて危険を顧みずジュニパーに手紙を渡しに行ったりする。しっかり逃亡の計画もジュニパーに伝えて、準備万全で臨んだ決行当日、ジュニパーが来ない。どこかのバーで別の男と一緒にいるのだった。
そのことを知ったマッドは、子供の頃から尽くしてきた彼女をあきらめる。一人でどこかに行ってしまおうと計画を変更した。そんなマッドを見て、エリスは「嘘つき!」とマッドを罵倒する。エリスにとって、マッドは人を愛し続けることができる証明みたいな存在だった。マッドにだけは裏切られたくなかったのだろう。
結局、一番思ったことは、女心はわからないということ。あと、マッドとトムの父子が浮世離れしているというか、少年たちに大事なことを残して、2人とも消えてしまうあたりなんか、神様のような存在だなと思った。砂浜についた足跡が十字架の形をしているところなんかも。
島の風景も見どころ。
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