2014/09/15

HOMESICK (2012)

HOMESICK (2012) ★★

職を失い一人でどうしようもなく一軒家にいる若者が、悪戯をしに来た3人の子供たちに元気をもらう話。正直言って面白くはなかったが、こんな駄目なやつもいるんだと、前向きな気持ちになった。

駄目なやつとは言っても、会社がつぶれてしまったことが原因なので、本人のせいではない。それなのに、しっかり自立して不動産屋で働いている幼馴染の女に、「健二君はほんとどうしようもないね」とか言われていて、何もわかっていない女だなと思った。

職を失っても、考えようによっては、自由になったととらえることができる。健二と職場の仲間たちはそう言っていたが、いざ何もすることがなくなると、落ち込んでいくのだった。そんなときに悪戯3人組が、健二のところにやってきて、多少なりとも彼は救われる。

玄関に置いてある犬の置物の顔が何度もアップになったりして、あれはいるのかとか思ったが、言葉で説明する映画ではなくて、感覚的な映画なのだと思う。気に入った場面はというと難しいが、健二と不動産屋の女との絡みを見ていて、かつて一緒に学校に通ったクラスメイトたちに同窓会で久しぶりに会った時など、ああ、こいつは落ちぶれたなとか、言葉に出さずとも思われていそうで怖い。そういう場面で、成功したと思われる人がいたとしたら、どういう人だろう。


2014/09/14

ラッキ (1992)

Lakki (1992) ★★★

ラッキ(Anders Borchgrevink)という少年が苦しんでいる姿を延々見せられたような映画だった。両親ともに問題を抱えていて、自分の部屋で悶々とし、学校に行っても嫌いな教師に目をつけられ、街に出ても変なおじさんに連れてかれるしで、八方塞がりのラッキだった。彼にとっての唯一の救いが、自分の背中に羽が生えてくるんじゃないかと、妄想することだけだった。羽が生えたり消えたりする夢を繰り返し見て、ベッドの上でのたうちまわっていた。途中から、浮浪者のような男にドラッグを盛られ、現実と幻覚が入り乱れた映像がしばらく続く。カオスだった。

つらい現実を忘れるための、ストレス発散方法を見つけておくといいと思う。映画を見たり運動をしたり、何でもいいと思うが、ラッキの場合は妄想することだった。幸せだった幼少期の思い出に浸ったり、羽の生えた自分の姿を想像して何とか凌いでいた。彼の部屋にはチェスボードが置いてあって、母親が触ろうとすると怒る。一人で駒を動かしている様子から、荒ぶれた中にも繊細さのある少年であることがわかる。

辛い少年時代を送った子は、将来的にその経験が何かしらの形で役に立つことがあると思う。それに打ち勝てば、たくましい人間になれるかもしれない。ただそれに打ち勝てず自殺してしまうこともある。まあ頑張るしかない。

ラッキが裸でもがいている姿など、よく作れたなって思った。「トムとローラ」「Barnens ö」のような感じ。もろには映っていないが、露出が激しく、ラッキという美しい少年の、ダークな面ばかり取りだてたイメージビデオのような映画だった。1時間40分見るには長く感じた。


2014/09/06

シェフ (2014)

Chef (2014) ★★★★

飛行機の機内で鑑賞。有名なシェフだったカールが、自分の料理を評論家にめちゃくちゃにけなされたことをきっかけに、トラック屋台でサンドイッチを売る商売を始める。彼にとっては屈辱的な成り下がりだったが、息子のパーシー(Emjay Anthony)と協力して屋台をまわしていくうちに、これまでほったらかしだった彼との絆が深まったり、妻や友達のありがたみを実感して生き方を改めるのだった。

初めこそ嫌な仕事だと感じても、やっているうちにやりがいを見出せるという内容に勇気をもらえた。辛い状況になっても、その分家族一丸となって乗り越えていけるし、前向きに一生懸命やっていればきっと良いことがあると思えた。

包丁で野菜を切ったり、パンをあげたり、見ていて気持ち良いぐらいの手際のよさ。これほど料理がおいしそうに見える映画は他には知らない。彼らが作る料理がジャンクフードという馴染み深い食べ物だったのでそう思えたのかもしれない。チーズのとろーり加減など最高だった。

ツイッターがキーアイテムとなって話が進んでいく。息子のパーシーは、ネットに疎い父親の変わりに、SNSを使いこなしてトラック屋台の宣伝を担当するのだった。市場で材料を仕入れて回っている最中に、さりげなくツイッターでつぶやいて、戻ってくる頃にはトラック屋台の周りに人が列を作って今か今かと開店を待ちわびているのだった。短い動画をアップできるコンテンツ、「vine」なども登場してきて、そういえばこのアプリ知ってる、こんなのも映画に出てくるようになったのか、と思った。10歳の息子が器用にスマホを使いこなしている様子を見てカールは驚いていたが、自分も彼と同じように驚いたので、そろそろ時代の変化に疎くなっているのかもしれない。

ちょうど、ひと夏の体験を描いた話だったので、旅行帰りの自分の境遇と重なって感情移入できた。パーシーは夏休みを利用して、普段は厨房にも入れさせてくれなかった父親と、屋台の厨房でせっせと肉を焼きながら各地を回った。終盤になると、そんな夏休みの日々を一日一秒撮りためてあったvineの動画をつなぎ合わせて、父親にメールで送るのだった。(画像10) 「ニューシネマパラダイス」のキスシーンのつなぎ合わせを観たときのような感動があった。息子が作ったその動画を見ながらカールは目に涙をためていたが、真っ暗な機内で自分も目をうるうるさせてしまった。やっぱり夏休みは一年で一番楽しい期間。来年からは仕事なのでそんな夏休みはなし。

個人的に、父親と息子の関係を描いた作品にぐっと来るものがある。この映画もそのひとつ。コメディタッチなので、テーマやメッセージなど、押し付けがましくもない。「スコットと朝食を」のように、ハートフルな映画だった。機内の小さい画面で観たとはいえ、本当にいい映画だったと思う。