不思議な映画だった。前半と後半で雰囲気ががらりと変わる。前半は、「トリュフォーの思春期」のように、街の人たちの楽しげな様子が見られる。しかし後半になると、主人公のブノワ(Jacques Gagnon)に試練的なものが課せられて、とんでもないラストを迎える。ユーモアにあふれているという点では「トリュフォーの思春期」と似ているが、この映画のそれはよりブラック。主役のブノワが美少女を押し倒しておっぱいを揉むシーンなどあり。ストーリー性を排したような作品なので、退屈になってもおかしくないが、雰囲気だけでも十分に楽しめた。田舎の風景や、レトロな色調、そして美男美女。
印象的だった後半の場面。
ブノワの家は葬儀屋をやっていて、人が亡くなると、その家まで遺体を引き取りに行く。時代設定が古いので、自動車ではなく、馬車で何時間もかけて往復する。あるとき、叔父さんのアントワーヌに連れられて、ブノワも一緒に遺体を取りに行くことになる。彼は好奇心にあふれていた。
しかし、亡くなったのは、ブノワと年齢のそんなに変わらない男の子だった。家に着くと母親は泣いている。そんな雰囲気の中、2人は用意されていたごちそうを味わう余裕はなく、アントワーヌは酒を飲まずにはいられない。ブノワもキョロキョロして落ち着かない様子。
男の子の遺体を入れた棺桶を馬車の荷台に乗せて、来た道を引き返す2人。アントワーヌは完全に酔っぱらって眠っている。ブノワは一人でぼうっと馬車に揺られていたが、アントワーヌの懐から酒瓶を取り出して、ぐいぐい飲み始める。そして、手綱を振り回して馬車のスピードを上げていく。
すると、男の子を入れた棺桶が、雪の積もった道に落っこちてしまう。すぐに馬車を止め、棺桶を積みなおそうとするが、上手くいかない(重たいし、片腕を骨折しているから)。アントワーヌは酔っぱらっていて役に立たない。どうすることもできないブノワは、棺桶を雪の積もる道にそのまま放置して、家へ引き返す。
家に着くや否や、ばったり横になって動かないブノワ。死体を放置してきたというのに、2人は本当に無責任。酔っぱらっていて夢見心地。
そのあとようやく、棺桶を探しに、来た道を戻るブノワたち。しかし見つからず、結局男の子の家にたどり着いてしまう。窓からこっそり中を覗くと、家の人たちは棺桶を囲んで、泣き崩れている。窓越しに、何とも言えない表情をしているブノワの顔がアップになって、ストップし、エンドロールが流れる。
ノスタルジック。
主役のブノワ。イケメン。
幼馴染の女の子。
夢見心地。日本的な模様。
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