2015/01/13

ファニーとアレクサンデル (1982)

Fanny och Alexander (1982) ★★★

319分を二日に分けて鑑賞。登場人物の話がいちいち長くて、集中して観続けてみるのはなかなか辛い。一度観ただけでは見落としている箇所や理解しきれていないところも多くあると思うが、話をまとめるという意味でもとりあえず感想を書いておく。じっくり時間をかけて進行していく群像劇の中で、少しずつ存在感を増してくる恐怖のようなものが、観てる側をひきつけるような映画だった。「1.エクダール家のクリスマス」「2.亡霊」「3.崩壊」「4.夏の出来事」「5.悪魔たち」と5章立てになっている。見るからにホラーチックな章題ばかり。

プロローグ
冒頭すぐにアレクサンデル(Bertil Guve)が不思議な妄想癖を持っていることがわかる。(あるいは霊感的なもの?)人型の彫刻がゆっくりと動き出したり、長い釜をもった死神が現れたりする。彼の目の前に現れる超常現象的なものは、彼自身が不安に思っていることや恐れているものばかりである。

第一章 エクダール家のクリスマス
伝統のある劇場を構えるプルジョワ家、エクダール一族は、クリスマスイブに豪華な晩餐会を催していた。しかしその光景はほとんど楽しそうには見えない。みんな何かしらの愚痴を言っている。嫌な感じの人間関係だった。屋敷の若いメイドに手を出すおじさん、幾度となく嫁を怒鳴るおじさんなど。中でも変だったのがカールというおじさん。「今から花火を見せてやる」と子供たちを誘いだし、階段を駆け上がったり下りたりを繰り返して、ズボンを下ろしてろうそくの前でおならをする。子供たちはそれを見て笑う。エクダール家はこの先大丈夫なのかと思う幕開けだった。

第二章 亡霊
アレクサンデルの父親が突然倒れる。父親が息を引き取る瞬間まで、アレクサンデルは恐怖のためにろくに父親と向き会うことができない。部屋の隅っこで膝を抱えて泣いていた。彼に比べて妹のファニーは泣き出すことなくしっかりと父親の死と向き合っているようだった。この時のアレクサンデルはまだ情けない感じだった。座長だった彼を失ったエクダール家は完全に落ち目。父親の死後、アレクサンデルの前には、父親の亡霊が現れるようになる。

第三章 崩壊
アレクサンデルの母親は劇団をやめて、結婚を申し込まれた神父の男のところへ嫁ぐことにする。アレクサンデルとファニーも連れられていく。何もかも捨てて新しい屋敷にやってきた3人だったが、そこでの生活は彼らにとって息の詰まる牢獄生活のようなものだった。夫は独自のルールを強要し、子供たちに厳しく接する。その厳しさは愛情ゆえだというが、アレクサンデルには義理の父から愛を感じることはできなかった。鉄格子がはめられていて、窓を開けることもできない部屋で過ごすファニーとアレクサンデル。

第四章 夏の出来事
この章では、義理の父親の言いなりになっていたアレクサンデルが反抗し始める。その報酬として、厳しい罰を受けるのだった。彼はお尻を鞭で叩かれて暗い部屋に監禁される。かつてこの屋敷に住んでいた娘の亡霊が現われて、アレクサンデルを怖がらせる。母親は耐えられなくなり、夫に離婚を申し込むが受け入れてもらえない。夫のことを殺したいと恨み始めるのだった

第五章 悪魔たち
いよいよクライマックス。エクダール家のおじさんたちが協力してくれ、子供たちは無事に屋敷から救出される。どうしても離婚させてもらえないので、母親は飲み物に睡眠薬を仕込んで夫を殺そうとするのだが、偶然に偶然が重なって、殺人罪にはとらわれず、事故死ということで収まる。別のところで保護されていたアレクサンデルが不思議な術を使ってそうさせたような見せ方になっている。

エピローグ
赤ちゃんも生まれて、エクダール家の復活を祝うパーティ。ただアレクサンデルのところには、焼死した義理の父親の亡霊が現れ、これからも悩まされるであろう終わり方だった。